他子ども会の創意工夫事例

「地域で子どもを育てる」ためには行事は必須、コロナさえも新たな行事企画の追い風に【名東区/極楽学区】

名東区で、全児童の5割以上が子ども会に参加し、約240名の会員を擁する「極楽学区」。高い加盟率の背景にある、魅力的な行事のヒミツと、ムリなく協力してもらうための保護者負担の軽減のコツについて、学区子ども会副会長兼事務局長の鈴木さんと書記の吉田さんにお話を伺いました。

【活動内容の工夫】他地域の取組+オリジナルの工夫をいれた「お月見どろぼう」は、子ども・地域にも大好評(以下1参照)
【活動内容の工夫】コロナ禍だからこそ、新しい行事にどんどんチャレンジ(以下2参照)
【保護者負担の軽減】ベテラン勢が学区役員を担い、現役世代の負担軽減とノウハウ継承をサポート(以下3参照)


1.子どもを「地域で育てる」ために、両者の接点となる行事はなるべく多く開催

「お月見どろぼう」という、ユニークな行事があると伺いました。どのような行事なのか、教えて下さい。

鈴木清二さん(区子連副会長、学区子ども会副会長兼事務局長)
9月末の中秋の名月の夕方に、学区内の子ども会の子どもたちが、協力して下さるご家庭(「宿」と呼んでいます)をまわって、軒先のお菓子をもらっていくという行事です。中秋の名月の日だけは、子どもたちはお月見のお供え物をそっと盗んでもよいという風習にヒントを得たもので、他の地域で実施されていた行事をアレンジして開催しています。今年で13年目となりますが、「宿」が約280軒、未就学児も含め学区内の多くの子どもたちが参加するほどになりました。

予想以上に大規模ですね!先ほどアレンジしての開催とありましたが、どのような点を工夫されていますか?

鈴木清二さん
1つ目は、子どもたちの安全面です。どのご家庭に行けばいいかをわかりやすくするために、「宿」のご家庭には看板を設置してもらうようにしました。加えて、お月見ということもあり最初は17-19時に実施していましたが、今は16-17時の開催としました。 2つ目は、「宿」の負担軽減です。あくまで自主的にご協力いただいているので、ご負担になることは避けたい。そのため、「家の人を呼び出さないこと」「お菓子は1つだけもらうこと」など、参加する子どもたちに守ってほしいルールを明文化しました。看板とルールは、行事当日に「宿」のご家庭のわかりやすい場所に掲示してもらっています。こうした工夫は、13年やる中で当日の様子や関係者の意見を踏まえて徐々に整備していきました。新しい取組も最初から完璧である必要はなく、まずはやってみて、徐々にブラッシュアップする形でよいと思います。

子どもたちや「宿」など、皆さんからの反応はいかがですか?

鈴木清二さん
子どもたちについては、シンプルに楽しんでくれています。楽しさの中身は、友達同士で色々なご家庭をまわることや、大好きなお菓子を大量にもらえること、学区の中を隅々まで体験できることなど、様々です。「この宿には面白い・高級なお菓子があるから、こういう順番でまわるといい」など、高学年になると自分達で工夫することも楽しんでいるようですよ。
「宿」の方々については、子どもたちの交流を楽しみにして下さっていますね。お菓子を軒先に出して下さるだけでOKなのですが、この行事のためだけにオリジナルお菓子を作って下さるお店や、くじ付きお菓子を準備して当日もずっと応対して下さるご家庭、すでにご自身の子どもは成長しちゃったけど恩返しの気持ちで協力くださっている方など。皆さんの言葉からは、色々な形で地域や子どもたちとの交流を楽しんでくださっていることを感じます。

吉田まきみさん(学区子ども会書記)
地域全体への波及効果も感じますね。中秋の名月が近づくと、地域のスーパーでは特設売り場ができます。行事当日は学区全体がとてもにぎやかになりますし、地域活性化にも貢献できているのかな、と。


2.コロナは制約ではなく、新しい行事にチャレンジするきっかけ

行事を企画・運営するにあたって、コロナは大きな制約になったのではないでしょうか。

鈴木清二さん
社会的にはそのような風潮はありましたが、私たちはコロナ禍で子どもたちが大きな制約を受けているからこそ、制約の中でも実施可能な行事を増やすためにドライブをかけました。

そうだったのですね!具体的に、どのような行事を企画・開催されたのですか?

鈴木清二さん
分かりやすいのが、「ウォークラリー」です。屋外で実施するので、感染リスクが低い。その流れで、過去に廃止していた「年末パトロール」も復活させました。
変わり種では、「花いっぱい活動」です。子どもたちに植物の種を渡し、各ご家庭で育て、育った様子を観察記録にしてコンテストで競うものです。各ご家庭で取り組むので密も回避できる一方で、みんなで一斉に取り組んでるので一体感を感じることもできる。前年上手く育たなくても今年育った子には「リベンジ賞」をあげるなど、コンテストの賞も工夫して、盛り上がるようにしました。
コロナは一見制約にも感じられますが環境変化ととらえると、新しい行事にチャレンジするにはピッタリのきっかけです。「〇〇だからできない」ではなく、「〇〇だとすると、何ができるかな」と考えます

年末パトロール
花いっぱい活動

なるほど!捉え方を変えると、取組もかわってきますね!しかし、色々とアイデアがあって、すばらしいです。

鈴木清二さん
私は、子どもは親が養い、地域で育てるものだと考えています。ですので、子どもと地域の接点を生み出す行事は、なるべく多く開催したい。コロナだけでなく、予算や当日運営など、行事には様々な条件があります。その条件を頭の隅におきつつ、他の地域の取組や誰かのアイデアなど見聞きした情報をもとに、面白い!とおもったアイデアは常に関係者に発信するようにしています。

吉田まきみさん
鈴木さんから発信されたアイデアは、私たち学区子ども会の役員たちが経験をもとに形にして、単子の役員さんたちに協力してもらって開催まで進めます。

鈴木清二さん
そうそう。役割分担してくれる存在がいるからこそ、子どもたちを育む行事ができるんですよ。


3.ベテランは、ノウハウ継承と負担軽減のため、学区役員としてサポート

非常に熱意をもって子ども会活動に取り組まれている鈴木さんですが、学区役員歴は長いですか?

鈴木清二さん
子どもが大きくなってから学区の子ども会の役員になりましたが、はや17年です。現役時代には単子役員としての経験はないですが、PTA会長をやっていました。

吉田まきみさん
私も子どもが大きくなってから学区子ども会に関わるようになり、今は6年目です。現役時代は、単子の会長をしていました。他の学区子ども会メンバーも私たちのようなベテラン勢が中心で、単子会長・PTA・消防団など、何等かの地域活動を担ってきたメンバーがほとんどです。ですので、地域や地域活動のことも分かるし、学区内の他の団体の方々に知り合いも多いです。

ベテランが学区子ども会を担い、現役が単子子ども会を担うという体制なんですね。ねらいや効果があれば、教えて下さい。

吉田まきみさん
行事の企画や学区全体の調整などを私たちが担うことで、忙しい現役世代の負担を少し軽くすることができるのが1つです。負担減を図ることで、より多くの方に子ども会に参加いただければと思っています。

鈴木清二さん
ノウハウが継承しやすいという点もありますね。例えば、コロナで中止していた行事を復活するというケースが今年は複数ありますが、過去のノウハウがないと実行するのが難しい。学区メンバーは長期にわたって関わっているので、過去のノウハウを伝えたりサポートしたりすることができます。

それは大変心強いですね!現役世代の単子の役員さんと協力をする上で、大切にしていることはありますか?

吉田まきみさん
負担軽減以外の観点としては、今の取組の目的や効果を理解してもらうことです。定例会では、こちらの図を使って今回の取組がどこに効いているのかを、折に触れて伝えています。

負担が軽くても意義を感じられない活動は長続きしない一方で、多少負担があっても意義を感じられると協力してもらえることもあります。

こちらの図、全体像が整理されていて非常にわかりやすいです。他の子ども会さんにも共通する部分が多く、皆さんの参考にもなると思います。本日は、ありがとうございました!


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