名古屋市で数少ない“消防団と連携した子ども会”は、保護者負担ゼロと唯一無二の行事で、2年で会員数が1.7倍【港区/野跡キッズ団】
2019年に、名古屋市で数少ない“消防団の協力組織の子ども会”として立ち上がった野跡キッズ団。少子化による児童減や子ども会加入率の低下から会員数減少に悩む子ども会が多い中、約2年で1.7倍の会員数になっています。鍵となるのは、「保護者の負担ゼロ」の運営と、他では体験できない魅力的な行事の数々でした。立ち上げからこれまでの5年間と、現在の運営・行事のポイントについて、キッズ団の顧問と代表および、消防団団長の3名にお話を伺いました!
【協力者のメリット】
子ども会と消防団をWinWinの関係に(下記1)
【保護者の負担軽減・広報活動】
「保護者負担ゼロ」を前面に(下記2)
【活動内容の工夫】
子ども達の「やりたい!」を「消防団の人脈」で実現につなげ、唯一無二の体験に(下記3)
【当事者のメリット】
運営側も子ども会員側も、子ども会を通じて多くを得る(下記4)
1.子ども会の運営主体になることは、消防団にとってもメリットあり
名古屋市で数少ない消防団の協力組織としての子ども会ですが、立ち上げのきっかけを教えて下さい。
中野顧問(野跡キッズ団顧問、野跡消防団副団長)
息子が幼少時に「サイレンが鳴る車」が好きで、その1つである消防車も大好きでした。我が子に消防車に関わる体験をさせてあげたいという想いから、親である私が消防団に加入しました。この時点で、学区内に子ども会がなかったので、消防団と何らか関係ある形で、子どもに色々な体験を提供できる子ども会も立ち上げたいなと思っていました。
ご自身のお子さんへの体験をスタートとした立ち上げだったのですね!とはいえ、かなり珍しい形態なので、子ども会の立ち上げは色々とハードルがあったのではないでしょうか?
中野顧問
そうですね。消防団に入団後、しばらくは実直に消防団員の仕事をやってから、消防団長に想いを打ち明けました。
佐々木団長(野跡消防団団長)
消防団入団は個人的な勧誘が大部分な中、中野さんは全くルートがない中での飛び込み入団だったので不思議に思っていました。ですので、話を聞いた時には驚く一方で、謎が解けたという思いもありましたね(笑)。
とはいえ、消防団が子ども会に協力するまでは、いくつもハードルがありそうですが。
佐々木団長
多くの消防団と同様に、うちの消防団も団員不足に悩んでいました。子ども会となると、比較的若い保護者が多く、消防団員になって下さる可能性がある方が多い。あるいは、なり手までは至らずとも、子ども会で消防団に関わる活動ができれば、消防団の活動への理解も進みます。子ども会の主体になることは、消防団にとってもメリットは大きいなと感じて協力することにしました。
中野顧問
団長という味方を得たので、消防署が依頼して学校単位で対応している春日井市や、消防署が主催の尾張旭少年少女消防団など、消防団と子ども会が連携している他市の事例を調べました。一部の反対意見もあったもの、粘り強く消防署や消防団・町内会・学区区政協力委員会などと協議を重ね、2019年7月に発足しました。
そのような背景があったのですね。消防団以外でも、地域の団体などで、子ども会の運営主体になることでメリットがある団体については、ご協力いただける可能性がありそうですね。
2.「保護者負担ゼロ」の謳い文句で会員数は右肩あがり、入会時の面談で関わり方を説明
小学校も各学年1クラスが基本の学級編成の中、会員集めには中々苦労されたのではないでしょうか?
中野顧問
最初は「消防団の協力組織」を前面に出した募集をしたのですが、見事に大失敗。子ども会に加盟すると、消防団にも引き込まれると親御さんが警戒しちゃったみたいで。改めて保護者の立場になって考え、「保護者の負担ゼロ!」を打ち出したところ徐々に人数が集まり始め、今では子ども同士の口コミや活動の様子に惹かれて、自然と会員を集められるまでに。2022年には26名だった会員数も、24年11月時点では45名まで増えました。個人的には、「親は負担ゼロ」という謳い文句と、行事の内容自体が魅力的であることが、1番の要因だと思っています。
会員数の減少に悩む子ども会が多い中、素晴らしい結果ですね!保護者負担ゼロとなると保護者との接点は薄くなりがちかと思いますが、どのような工夫をされていますか?
中野顧問
入会時には、私とお子さん・保護者で面談をします。どんなお子さんなのかをしっかり拝見してキッズ団のルールを説明するとともに、心配事についてもここでしっかりクリアにしてもらいます。行事への保護者参加については基本は不要ですが、安全確保のために2年生以下のお子さんについては例外的に同席をお願いしています。それ以外は、我々消防団員がサポートすることで、成立させています。
面談のしくみや明文化されたルールなど、とてもしっかり運営されていますね。そして、当日運営も消防団の方に対応いただくことで、保護者負担の軽減につながっているのですね。
3.子ども達の「やりたい!」を、「消防団を中心とした人脈」を使って実現
年間を通じて、どのような行事を開催していますか?
中野顧問
毎月1回に近いペースで行事開催しています。子ども達から「やりたい!」と声が上がったテーマについて、私を中心とした消防団メンバーが実現に向けて調整していくのが基本のパターンです。元々は行事開催ごとに振返りや、次回以降にやりたいテーマを書いてもらっていましたが、人数も増えてきて書く側も管理する側も大変なので、日々の会話から「やりたい!」ニーズを拾う形に変更しました。複数回の歴史がある行事もあれば、着衣水泳のように、今年度から始まったものもあります。
どの行事も魅力的かと思いますが、特に人気が高いものを教えて下さい。
中野顧問
1つは、小学校での宿泊型災害体験です。災害時の避難を想定して、体育館に段ボールパーティションを制作し、電気やガスを使わない夕食調理を行います。火災時を想定した煙道体験や、消防車を使った放水体験など、消防団の協力が不可欠な内容も豊富に入れています。
もう1つは、自衛隊基地の見学です。自衛隊の車にのって基地内を見学したり、災害救助時の30㎏リュックを背負わせてもらったり、目の前で戦車を見せてもらったり。こちらは消防団の人脈を使って開催したもので、体験内容は大人でも魅力的に見えるような自衛隊に関する内容をたっぷり織り込みました。
すごい豪華な内容!!消防団の子ども会ならではの内容ですね。
中野顧問
そうですね。ハロウィンやクリスマス会などの一般的な内容と、消防団の子ども会ならではの内容と、バランスよく開催するようにしています。
4.トップに立つことで、見える景色がかわった高校生リーダー
会の創立時以来の会員で、今年からキッズ団代表をつとめている中野耀太さんですが、1年足らず代表を務めてみて率直な感想はいかがですか?
中野耀太さん(野跡キッズ団代表)
参加する側と運営側で見える景色が違っていて、学校ではできない体験ができているなと思っています。具体的には、代表になって初めての行事が宿泊型災害体験だったのですが、小学生達が楽しすぎて盛り上がってしまって、運営側の声が中々届かなくて大変でした。その時には消防団長に前に立ってもらって何とか場を収めましたが、次回開催時には自分を含む高校生メンバーで対応したいと思っています。運営側を経験することで高校生メンバーの意識も大きく変わってきて、代表の私からの依頼にとても積極的に対応してくれるようになりました。私は学校で生徒会メンバーなのですが、ここキッズ団での経験はいろいろなところで活きています。
あとは、純粋に「やりたい!」という想いが行事として具体的に体験できることが楽しくて、学校でもこの子ども会でもどんどん「やりたい!」ことがでてきます。
中野顧問
他のキッズ団のメンバーも、小学校や地域でリーダーをはることがあって、私としてはとても嬉しいです。
創立以来、会の柱として引っ張ってきてくれている中野顧問は、この活動を通じてどんなことを得られていますか?
中野顧問
まず1つ目に、自分自身がとても楽しんでいる事です。よく色々な人に大変ですねと言われますが、この立場がなければできない貴重な体験をさせてもらっています。仕事とは一味違ったやりがいです。また、消防団の佐々木団長は、行事開催時の人脈サポートからNGな時にはきちんと叱ってくれるのも、本当にありがたいです。大人になるとこんな関係を築けることは稀なので、こうした人脈を得られることもありがたいですね。
代表も顧問も、行事からの直接的な楽しみだけではなく、会の運営から多くのものを得られているのですね。本日は、インタビューへのご協力、ありがとうございました!
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